松山・道後でテレビCMのナレーション録音|3本のNeumann U 87 Aiを声に合わせて使い分け

Oto-Niwaのレコーディングルーム
Oto-Niwaのレコーディング用マイクの一部

掲載写真はOto-Niwaの既存設備写真です。今回のテレビCM案件や企業を特定するものではありません。

企業のテレビCMで使われるモノローグを自然に届けるには、後から編集するだけでなく、話者の表現を土台に、声に合うマイク、マイクとの距離、子音の明瞭さ、録音環境を収録時に整えることが大切です。

今回、愛媛県松山市道後緑台のOto-Niwa(オトニワ)で、ある企業の理念や思いが込められたテレビCMのナレーションを録音しました。使用したのはNeumann U 87 Ai。Oto-Niwaが所有する同モデル3本を聴き比べ、今回の声と表現に合う一本を選びました。

企業の理念や思いを伝えるCMモノローグを録音

今回の収録は、企業の理念や思いを一人の話者が語るモノローグ形式でした。

モノローグとは、一人の話者が自分の思いや物語を語る表現です。情報を正確に読むだけではなく、言葉の間、息づかい、声の距離、温度感まで含めて、聞き手へどう届くかを考えます。

私はモノローグが好きです。

新しい言葉や世界観に出会い、それを録音できると聞くと、今でも嬉しくなります。企業の理念を伝える原稿には、その会社が何を大切にし、どこへ向かおうとしているのかが凝縮されています。その思いを声として残すことには、音楽とはまた違う面白さがあります。

なお、このテレビCM案件は企業名を公開できないため、本記事では企業名やCMの具体的な内容を記載していません。

ナレーション録音にNeumann U 87 Aiを選ぶ理由

今回活躍したマイクは、Neumann U 87 Aiです。

U 87 Aiは、音声、ボイスオーバー、放送、歌声、楽器など幅広い収録で使われているコンデンサースタジオマイクです。無指向性、単一指向性、双指向性の3つの指向性を選べるほか、ローカットと10dBのパッドも備えています。

Oto-Niwaのレコーディング環境にも、U 87 Aiを常設しています。

Oto-Niwaのレコーディング用マイクの一部
Oto-Niwaで使用しているレコーディング用マイクの一部。

同じモデルでも、3本それぞれに感じる音の個性

Oto-Niwaには、同じU 87 Aiが3本あります。

同じ型番のマイクですが、私たちが実際に聴き比べると、3本それぞれにわずかな音の個性を感じます。そこで「U 87 Aiだから、この一本」と機械的に決めるのではなく、話者の声質、原稿の内容、求める距離感に合わせて使い分けています。

これは、すべてのU 87 Aiに同じ差があるという一般論ではありません。Oto-Niwaにある3本を日々聴いてきた、私たちの現場での判断です。

高価で有名なマイクを使えば、自動的に良い録音になるわけではありません。大切なのは、その声と作品に合うかどうかです。

モノローグ録音の鍵は、近接効果と子音のバランス

モノローグの収録では、マイクとの距離と角度を細かく調整します。

今回、特に重視したのは次の2点です。

  1. 近接効果をどのくらい生かすか
  2. 子音の明瞭さをどの程度保つか

マイクとの距離で、声の厚みを整える

近接効果とは、単一指向性などの指向性マイクへ近づいたとき、低音域が強調される現象です。

声に厚みや近さを与えられる一方、使いすぎると言葉が重く聞こえたり、全体のバランスが崩れたりすることがあります。近づけばよい、離れればよいという話ではありません。

原稿の内容、話者の声、CM全体の映像表現に合わせて、どこまで近接効果を使うのかを決めます。

子音を伝えながら、破裂音や歯擦音を抑える

「子音を立てる」とは、言葉の輪郭が聞き手へ伝わるよう、発音と収音を整えることです。

ただし、子音を強くすればよいわけではありません。「パ」「バ」などの破裂音や、「サ」「シ」などの歯擦音が強く入りすぎると、聞きづらさにつながります。

話者の発音、マイクとの距離、角度、ポップフィルターなどを調整し、言葉の明瞭さと耳当たりのよさを両立させます。

「後で編集する」だけでは作れない音がある

録音後の編集は、とても大切な工程です。

ノイズを整え、不要な帯域を調整し、声量差をまとめ、CMの映像や音楽に合う形へ仕上げます。編集技術が必要ないという意味ではありません。

一方で、収録時に失われた話者の表情や、不明瞭になった言葉、録音環境による大きな問題を、後工程だけで完全に取り戻すことは困難です。

だからOto-Niwaでは、「後から直せばよい」と考えるのではなく、収録の段階でできるだけ良い素材を残すことを大切にしています。

話者が原稿へ込めた思いを受け取り、どのような声で届けるのかを一緒に考える。声に合うマイクを選び、距離と角度を調整し、安心して話せる録音環境を整える。

編集は、そこで録れた表現の魅力を引き出し、作品として仕上げる工程です。

Oto-Niwaのレコーディング作業環境
Oto-Niwaのレコーディング作業環境。

良い録音は、一つひとつの積み重ねでできている

音は、一つの高価な機材だけで決まりません。

Oto-Niwaでは、次の要素を一つの流れとして考えています。

  1. 話者や演奏者の表現
  2. 録音する空間の静けさと響き
  3. 声に合うマイクの選択と設置
  4. マイクとの距離と角度
  5. ケーブル、マイクプリアンプ、A/Dコンバーターまでの信号経路
  6. 録音後の編集と仕上げ

A/Dコンバーターとは、マイクやマイクプリアンプを通ったアナログ音声を、コンピューターで扱えるデジタル信号へ変換する機器です。

各要素の重要度は、収録内容や現場の条件によって変わります。ただ、私たちが最優先にしているのは、後から置き換えることができない話者や演奏者の表現と、それを収録時にできるだけ自然に残すことです。

良い語りが、良い空間で、声に合うマイクを通り、丁寧に記録される。そして編集によって、媒体や作品に合う形へ仕上げられる。

その一つひとつの積み重ねが、良い音、良いナレーション、良い作品につながると考えています。

妥協せず、良いものを作り続けられるスタジオへ

企業の理念や思いが詰め込まれたモノローグは、短い時間の中に多くの意味を持っています。

その言葉を、ただ録音するのではなく、聞く人の心へ届く音として残したい。

マイクを選ぶことも、数センチ単位で距離を調整することも、子音や息づかいを確認することも、すべてはそのためです。

これからもOto-Niwaは、一つひとつの工程に妥協せず、良いものを作り続けられるスタジオでありたいと思います。

テレビCM、Web動画、施設案内などのナレーション収録をご検討中の方は、用途、原稿の長さ、希望納期などをお聞かせください。マイク選びから収録、編集まで、内容に合わせてご相談いただけます。

ナレーションやアフレコだけでなく、歌のボーカルレコーディングにも対応しています。録音だけのご依頼はもちろん、ミックス付き、マスタリング付きなど、必要な工程を組み合わせてご依頼いただけます。

よくある質問

テレビCMのナレーション録音では、どのマイクを使いますか?

話者の声質、原稿、求める雰囲気に合わせて選びます。今回のテレビCMではNeumann U 87 Aiを使用しました。Oto-Niwaは同モデルを3本所有しており、実際に声との相性を確かめて使い分けています。

モノローグ録音で大切にしていることは何ですか?

話者の表現を土台に、マイクとの距離による声の厚み、子音の明瞭さ、破裂音や歯擦音のバランスを収録時に整えることです。

ナレーションは編集で良い音にできますか?

編集は、録音した声を作品や媒体に合う形へ仕上げる重要な工程です。ただし、収録時に失われた表情や不明瞭な発音を、編集だけで完全に取り戻すことは難しいため、収録段階から丁寧に音を作ります。

ナレーションやアフレコだけでも依頼できますか?

はい。Oto-Niwaでは、ナレーションやアフレコを含む各種録音に対応しています。収録内容や納品形式によって準備が変わるため、事前にお問い合わせください。

ボーカルレコーディングだけでも依頼できますか?

はい。歌のボーカルレコーディングだけでもご依頼いただけます。録音のみ、ミックス付き、マスタリング付きなど、制作状況や希望する仕上がりに合わせて必要な工程をお選びいただけます。

AUTHOR

相原健二

株式会社SOUND GARDEN代表取締役。尚美学園出身。13歳からバンド活動を始め、その後はシンガーソングライターとしても活動。現在は、映像監督、舞台監督、音楽監督、作曲家として、映像・音楽・音声・イベントを横断した制作に携わっている。

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